今日が人生最後の日

大好きな旦那っちに逢いに行くその日まで。。。

告別式

今日は旦那っちを見ていられる最後の日。

朝、着いて旦那っちにおはようを言いに行ったら、ちょっと笑っていた。

義妹と義弟3人での宴、楽しかったんだね。


式が始まる前、緊張してきた。

喪主として私は挨拶があるからね。


告別式は前職場の女の子達も来てくれていた。家にみんなが作ってくれたアルバムがあったので、一緒に棺に入れてあげてくださいと頼んだ。


読経で木魚に合わせて、

私はバカバカと唱えていた。

お焼香が終わると最後のお別れが待っていた。


棺に入った旦那っちは、

やっぱり眠ったまま起きなかった。


私は今まで一緒に行ったチケットの半券と手紙を棺の中へ入れた。

子供達も書いてきた手紙を入れた。

父さんにバカにされるから、父さんの前では泣かないと言っていた王子が泣いていた。


お花を顔の周りに飾った。

姫が顔の上にお花を置こうとしたので、

笑ってしまった。

旦那っちも笑ったに違いない。


義母が「お母さんの○○ちゃん」と言った。

違うでしょと心の中でツッコミを入れた。

私のでしょと。

旦那っちの側をなかなか離れない義母に義妹が気を使って声をかけてくれた。

私は旦那っちの耳元で、○○くん大好き。

またね。待っててね。ありがとう。

誰にも聞こえないように何度も言った。


私は喪主として妻として挨拶をした。

こんなに早く喪主をすることになるなんて。。。

途中で涙がこみ上げてきたけど、

なんとか挨拶することができた。


出棺。

棺を車に納めた後、会社の人達にもう一度挨拶した。ありがとうございましたと。


火葬場へは、王子と私で霊柩車に乗った。

車内が寒かった。

寒いね。これが本当の霊気だねって、

私の口から冗談が出た。

私の挨拶どうだったときくと、

王子はやるやんと誉めてくれた。

私が頑張るときでしょ。


火葬場につくとすぐに案内された。

立派な火葬場で住宅街にあったので、

びっくりした。人が沢山いて、

ここが火葬場だなんて思えない場所だった。

こちらへと案内され、あっという間に

旦那っちが入った棺がしまわれた。

旦那っちの体が無くなってしまう。

現実味がなかった。


待合室で30~40分待つと出来上がりましたとばかりに呼ばれた。

旦那っちは大量の骨になっていた。

若いからしっかり残っていた。

すべて骨壺に納まるのだろうか。

分骨の小さな骨壺に入れたい部分を選ぶ。

王子は耳。

耳を身に付けておけば音楽聴きに一緒に行けるって。

私は足の親指が欲しかった。

大きな親指で引っ張ったら取れそうでよく取ろうとしていたから。

王子に話したら、何それと笑われた。


お骨を持って会場に戻った。

みんなで食事をした。

お腹は空くけど食欲はなかった。


家に戻ってきた。

葬儀が終わったと数人にメールした。

両親が泊まることになった。


王子に買い物に行ってもらって、

夜みんなでうどんを食べた。


私は食べながら考えていた。

旦那っち何時に帰ってくるかなぁ。。。

うどん食べるかなぁ。。。と。

お通夜

会場へ向かった。


棺に入った旦那っち。

棺の大きさは調度よかった。

王子が父さんは閉所恐怖症だから、大きい棺にすると言ってこの大きさになった。

王子ありがとね。


立派な祭壇だった。

白と紫が基調となって花が飾られていた。

王子が昨年撮った写真が飾られていた。

笑っている旦那っちの写真は少ない。

王子が撮っていたところに、ひょこっと入り込んだ写真。

いたずらしている時の笑った顔だった。


式が始まる前まで大好きだった歌を流してもらった。


家族葬にしたので、

参列するのは本当に身近な親族だけ。

職場の方にはその旨を伝えが、どうしてもお別れがしたいと参列していただくことになった。


一番仲の良かった職場の子。

20代の若者たち。

式が始まる前にお顔を見てもらった。

数日前まで一緒に働いていたのにね。

ごめんなさい。


住職の読経が始まった。

お焼香をすませ、参列者に何度もお辞儀をした。

お経を唱えていても、私の頭は理解できなかった。

私のわからないところで、時間が流れていった。


住職からいただいた戒名。

素敵な戒名だった。


お式が終わると会社の方と話をした。

みんな初対面だ。

最近いつもつるんでいたアルバイトの子。

あの日も一緒にいた。飲みに行ってもすぐに寝てしまうから、あまり飲んでいなかったこと。もう一人の子が送ってくれていたこと。いつもより足取りもしっかりしていたこと。それでこんなことに?その子達も訳が分からないだろう。ごめんね。そして、ありがとう。


王子が一言話してくれた。

父は仕事を楽しんでいました。

とても充実していたと思いますと。

王子と同世代のアルバイトの子達と働いていたから、たくさん話してたもんね。。。


上司、社長、アルバイトの女の子たちにもお詫びとお礼を伝えて帰ってもらった。


その後はみんなで会食。

昔話やなんやかんやで賑やか。


なんだか私だけ穴の中に入っているみたいだ。


白い穴。


義弟に話しかけられてはっとした。


私は無だった。

何も感じていなかった。


義妹と義弟に旦那っちをお願いして、

家に帰った。

兄弟最後の宴、楽しんでね。。。


家に帰ると、

旦那っちはいなかった。

いなくなってしまった。。。

出家

今日、旦那っちはこの家を出て行きます。

みんなも集まるから、

家族でいられるのはあと少しだけ。。。


姫の前でキスをした。

パパとママのキスだよ。

姫は冷たいパパにチューすることはできなかった。


旦那っちの唇は冷たかったけど、

柔らかかった。



今日は私の両親が来る。

落ち着かない。


父と母の顔を見たら、

我慢できなくなって涙が溢れた。

父と母にしがみついて泣いた。

義母は「こんなことになってすみません」

と謝っていた。


みんなで旦那っちの旅支度をした。

旦那っちは少しピリッとした顔になった。

足袋を履かせて、すねあて、てっこうをつけて、数珠を持たせて、六文銭を懐に入れた。

六文銭とは三途の川の渡し賃。

姫は「パパお金落とさないでね」

と言っていた。

姫が心配してるよ。笑


最後まで旦那っちに触れていたい。

最後まで髭をさわっていた。

私が大好きだった髭。

子供たちが嫌がっていた髭。

耳元で大好きって何度も言った。

旦那っちはくすぐったそうな顔をしていた。


旦那っちはいってしまった。

20年間一緒にいてくれた○○くん。

20代から40代まで

一人の男の人と私はずっと一緒にいた。


あの顔と。

あの体と。

あの声と。


慣れ親しんだあのぬくもりは

もう二度と感じることはできないんだ。。。


いってしまうんだね、私をおいて。。。