出家
今日、旦那っちはこの家を出て行きます。
みんなも集まるから、
家族でいられるのはあと少しだけ。。。
姫の前でキスをした。
パパとママのキスだよ。
姫は冷たいパパにチューすることはできなかった。
旦那っちの唇は冷たかったけど、
柔らかかった。
今日は私の両親が来る。
落ち着かない。
父と母の顔を見たら、
我慢できなくなって涙が溢れた。
父と母にしがみついて泣いた。
義母は「こんなことになってすみません」
と謝っていた。
みんなで旦那っちの旅支度をした。
旦那っちは少しピリッとした顔になった。
足袋を履かせて、すねあて、てっこうをつけて、数珠を持たせて、六文銭を懐に入れた。
六文銭とは三途の川の渡し賃。
姫は「パパお金落とさないでね」
と言っていた。
姫が心配してるよ。笑
最後まで旦那っちに触れていたい。
最後まで髭をさわっていた。
私が大好きだった髭。
子供たちが嫌がっていた髭。
耳元で大好きって何度も言った。
旦那っちはくすぐったそうな顔をしていた。
旦那っちはいってしまった。
20年間一緒にいてくれた○○くん。
20代から40代まで
一人の男の人と私はずっと一緒にいた。
あの顔と。
あの体と。
あの声と。
慣れ親しんだあのぬくもりは
もう二度と感じることはできないんだ。。。
いってしまうんだね、私をおいて。。。